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特集第6回 広がる学力格差

地域間の教育格差も拡大する!?

全国に約200校できた公立の中高一貫校
評価のばらつきを広げる地域ごとの絶対評価
教育再生会議がスタート
行きたい学校に利用券を出す教育バウチャー制

全国に約200校できた公立の中高一貫校

中高一貫教育というと、これまで私立学校や国立大学の附属校が行っていたものですが、ここにきて公立の中高一貫校が全国で次々と生まれています。
高校受験の影響を受けずに、ゆとりある学校生活を送れる、一貫したカリキュラムのもとで生徒の個性を伸ばせる、という6カ年一貫教育のメリットを公立学校でも活かそうという、教育の規制緩和策の一つです。もともと、公立の中学校は市区町村、高等学校は都道府県と、設置者が異なるのですが、その規制を撤廃して、都立や県立の中学校が平成11年度からできるようになり、これまで全国に約200校が開校しました。
首都圏では平成15年度に埼玉県立伊奈学園、平成16年度に都立白鴎高等学校附属が開校しました。さらに平成18年度には、伝統ある都立高校を母体とした、小石川、両国、千代田区立九段、桜修館の4校が開校しました。平成19年度は、千葉県でも千葉市立稲毛高等学校附属が開校。また、埼玉県では屈指の人気校さいたま市立浦和が中高一貫校に。今後は、神奈川県でも開校の予定があります。
入学するには適性検査や作文といった選抜試験があるものの、学費が安いということに加え、もともとが公立の中でも伝統校なので、倍率は非常に高くなっています。地域の学校選択制とあいまって、中学進学の際の選択肢の一つとなるでしょう。
平成18年度都内公立中高一貫校の受験者数と応募倍率
学校名 募集枠 募集人数 応募人数 倍率
 小石川中等教育学校  特別枠 男女計 1.0
一般枠 男子 77※ 961 12.5
女子 79※ 946 12.0
 白鴎高等学校附属 特別枠 男女計 16 83 5.2
一般枠 男子 70※ 360 5.1
女子 74※ 541 7.3
 両国高等学校附属  一般枠 男子 60 608 10.1
女子 60 687 11.5
 桜修館中等教育学校  一般枠 男子 80 641 8.0
女子 80 903 11.3
 九段中等教育学校
 (設置者は千代田区) 
区分A
(千代田区内)
男子 40 68 1.7
女子 40 67 1.7
区分B
(千代田区外)
男子 40 422 10.6
女子 40 466 11.7
(東京都教育委員会発表資料および千代田区教育委員会発表資料をもとに作成)
※: 特別枠の手続き人数を差し引いた数が一般枠の募集人数になる。
特別枠とは、特に優れた技能や能力を持つ者を選ぶための枠。

評価のばらつきを広げる地域ごとの絶対評価

現行の学習指導要領から導入された評価の方法である「絶対評価」の扱いが、学校間格差を広げるのではないかとの懸念もあります。
神奈川県では毎年各中学校の中学3年生の評定結果の分布を公表しています。それによると、「5」の評価のついた生徒の割合が、学校や地域の間で大きく開いたことが報告されています。ある市のある中学校では、中3の30%以上に数学で「5」がついたのに対し、別の市のある中学校では「5」をもらえる生徒は5%程度しかいなかったのです。
「絶対評価」は、ある目標に対してどのくらい達成できたかを判断する評価の方法です。他の生徒との比較でその子どもの成績を決める「相対評価」とは異なり、理論的にはすべての子どもに「5」をつけることも、「1」をつけることも可能な方法です。
評価のばらつきを広げる地域ごとの絶対評価
評定は高校受験の内申書にも大きく影響します。神奈川県は県立高校の学区制を撤廃し、県内のどの高校にも応募することができるようになりましたから、県立高校に進学したい生徒の場合は、よりよい内申点を得なければなりません。特に2学期制を取り入れている学校は評価が年に2回ですから、その重みは増しているのです。
県教育委員会は、評価のばらつきを具体的な基準を示すことなく公表し、「ある程度は容認する」という姿勢を示しています。これでは公立学校不信が起きても仕方がないかもしれません。
「○○市はいい評定を付けてくれるのでは?」という憶測が飛び交ったり、「わが子の通っている学校の評価は適切ではないのでは?」と感じる保護者が出てきてしまうでしょう。

教育再生会議がスタート

安倍政権が最重要課題としている教育改革。そのための直属機関として、平成18年10月に「教育再生会議」が発足しました。メンバーには、ノーベル化学賞を受賞した野依良治氏をはじめ、学力向上論で知られる陰山英男氏、大手外食企業の株式会社ワタミ社長で、郁文館夢学園理事長も務める渡邉美樹氏などが名を連ねています。
教育再生会議のメンバー ※敬称略
 野依良治   理化学研究所理事
 池田守男   資生堂相談役
 浅利慶太   劇団四季代表・演出家
 海老名香葉子   エッセイスト
 小野元之   日本学術振興会理事長
 陰山英男   立命館大教授  立命館小学校副校長
 葛西敬之   JR東海会長
 門川大作   京都市教育長
 川勝平太   国際日本文化研究センター教授
 小谷実可子   スポーツコメンテーター
 小宮山 宏   東京大学総長
 品川裕香   教育ジャーナリスト
 白石真澄   東洋大学教授
 張 富士夫   トヨタ自動車会長
 中嶋嶺雄   国際教養大学理事長・学長
 義家弘介   横浜市教育委員 東北福祉大学講師
 渡邉美樹   ワタミ社長 郁文館夢学園理事長
1月には、これらをまとめた第1次報告として「7つの提言」と、実現を急ぐゆとり教育の見直しなど「4つの緊急対応」が安倍首相に提出されました。報告はこれまでの「ゆとり教育」を見直し、学校の授業時間数を10%増加、薄すぎる教科書を改善することを求めています。自殺者まで出した「いじめ問題」については、先生が子どもに対して毅然とした態度を取れるよう、体罰の基準を見直すことを促しました。また不適格な先生をそのままにしないために、教員免許に「更新制」を導入することや、その先生を束ねる教育委員会制度の改革も法改正を急ぐよう提案しています。
そのほか、将来的には、バウチャー制度の導入などにも注目が集まっています。

行きたい学校に利用券を出す教育バウチャー制

バウチャー(Voucher)というのは、「利用券」「現金引換券」の意味で、行政が子どものいる家庭に交付します。保護者はそのバウチャーを、子どもを通わせたい学校に直接提出し、学校は集まったバウチャーの数に応じて、運営資金を行政から受け取るというシステムです。
アメリカのウィスコンシン州やオハイオ州の一部などで低所得者層の援助のために導入されていますが、日本での狙いは別の点にあるようです。教育バウチャー制度を導入すると、学校は生徒獲得のために、子どもや保護者の要望に応えるため、特色のある学校を作ったり、設備や授業の中身を良くしていこうとします。競争原理が働いて「教育の質の向上」が実現できると考えられているのです。
しかし、ここでも学校を選択できる自由と引き替えに、デメリットも考えられます。バウチャーを多く集めた学校が人気校として資金や生徒が集まる一方で、バウチャーの集まらない学校では先生のやる気も失われてしまうといったことがあるかもしれません。義務教育にかかるお金の国の負担分が削減されつつある今、財政面で苦しい地方自治体では他の自治体との格差が広がる上、学校間では予算の取り合いになってしまうのではないかという疑問の声もあります。
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